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Sunday, November 1, 2020

焦点:「社会運動」にどう対応、悩む米企業 慎重派なお多数 - ロイター (Reuters Japan)

[27日 ロイター] - 今年5月、黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人警官に首を押さえつけられて死亡した事件をきっかけとして全米に抗議行動が広がると、米主要企業の間で、人種差別に正面から取り組み、社会正義の実現を後押しすると表明する動きが相次いだ。

 今年5月、黒人男性ジョージ・フロイドさんが白人警官に首を押さえつけられて死亡した事件をきっかけとして全米に抗議行動が広がると、米主要企業の間で、人種差別に正面から取り組み、社会正義の実現を後押しすると表明する動きが相次いだ。写真は6月、シアトルで「ブラック・ライブズ・マター(黒人の命は大切)」と書かれたサインを掲げる人(2020年 ロイター/Lindsey Wasson)

ホームセンター大手のホーム・デポHD.N、日用品大手プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)PG.N、飲料大手コカ・コーラKO.Nといった企業がそうした態度を明らかにしたほか、従業員の構成や事業展開している地域社会の多様性推進に、多額の投資を約束する向きも出てきた。例えば、金融大手のJPモルガン・チェースJPM.Nは最近、向こう5年で300億ドルの資金を投じる方針を打ち出している。

ところが、シリコンバレーを中心に社会問題に対し、より慎重に対応しようとする企業がなお多いことが、さまざまな関係者への取材で分かった。

こうした考え方を支持する経営者やそのアドバイザーの言に従うなら、企業と従業員は米国の分断化を一層進めるような賛否が分かれる問題で旗幟(きし)を鮮明にせず、純粋に経営上の戦略や業績目標の達成に専念するべきだという。

実際、各企業の経営陣や取締役会は、社会問題をどう扱うか議論を重ねていると複数の関係者は証言する。ある企業は「沈黙作戦」を採用。別の企業は経営幹部が社会的、政治的に微妙な事案について、どこまで発言できるか細かい指針を策定している。

企業に助言するマイルズ・グループのスティーブン・マイルズ氏は「企業が事業活動の範囲外の問題まで解決してくれると従業員が期待している状況に、経営陣は頭を抱えている」と指摘した。

マイルズ氏はここ数週間で少なくとも10人の企業トップと話をしたが、彼らはいずれも、9月の発言が大論争に発展した仮想通貨交換所大手、コインベースのブライアン・アームストロング最高経営責任者(CEO)に同情的だった。

アームストロング氏は9月27日付のブログで、コインベースと同社従業員は会社の「使命」に注目し、業務と関係がなく生産性を低下させる社会的な問題に首を突っ込むべきではないと述べ、これをツイッターに投稿。一部の有力ハイテク企業の創業者や元幹部らは、支持するコメントを返した。アームストロング氏の考えは、見えている以上に米企業界で共有されている可能性もある。

ベンチャーキャピタルのコア・イノベーション・キャピタルのマネジングパートナー、キャスリーン・ウテクト氏は「経営者はこの問題で公式には見解を示さないが、取締役会では『われわれはどうすべきか』と相談している」と述べた。

ウテクト氏もアームストロング氏の見解に賛成する。特に込み入った社会問題に、限りある資源を注ぎ込みたくない中小企業経営者の間では、こうした意見は見た目よりも、ずっと一般的だと解説する。

米企業は少し前から、気候変動や男女間の賃金不平等、性的少数者の権利といった問題で対応に批判が出ると、その後に積極的な取り組みに乗り出してきた。そういった素地もあり、最近になって反人種差別への支持を明らかにした企業が、かつてないほど増えたと言える。

ただ、ハーバード大学でCEOの社会的・政治的活動を研究しているマイク・トフェル教授によると、そうした企業の態度は、歴史的にはやはり異例だからこそ、注目を集めているという。

5─10年前に比べれば当たり前になってきたとはいえ、企業が政治活動に従事すべきだという考えは、だれにも共有されるというには程遠く、多くの企業は関わらないようにしているという。

企業の説明責任確保を求める非営利団体、アズ・ユー・ソーの暫定データに基づくと、ラッセル1000銘柄構成企業の約半分は、今年の夏の人種差別問題の盛り上がりでも、何も声明を出さなかった。同団体最高責任者のアンドリュー・ベハー氏は、声明を公表した企業の中でも195社は、CEO個人のリンクトインないし従業員のフェイスブックといった見つけにくい所に投稿され、企業の公式ホームページには掲載されなかったと述べた。

人工知能(AI)技術のニュアンス・コミュニケーションズNUAN.Oなどの取締役を務めるロイド・カーニー氏は、「賢い」企業は社会問題について内部的には対処策を導入しているが、決して目立つやり方によってではないと指摘。そのことで従業員や顧客、政治家などからの反発回避ができているとの見方を示した。

カーニー氏によると、静かに対処するのがより良い方法で「これだけ政治的な対立が高まっている環境では、プレスリリースを出すなどは最も拙劣なたぐいだ」という。

ある企業アドバイザーはロイターに、シリコンバレー周辺の5─6社が最近、「黒人の命は大事」運動など社会的、政治的に扱いが難しい問題を経営幹部がどういった形でなら議論できるかに関する「安全指針」を設けたと明かした。特定の問題については幹部個人の意見だと明確にすることや、コメント内容を取締役会に報告することなどだ。

ソノテック・コープSOTK.PKは9月、従業員が仕事中、あるいは会社の資源を使って政治活動へ参加するのを禁じる行動規範を採用した。スティーブ・バグリー最高財務責任者(CFO)は、この規範は今、世界が大荒れとなっている中でとりわけ重要で、従業員が安心して職務に専念する上で役立つと説明している。

5Wパブリック・リレーションズの責任者として多くの業界のCEOと話をしたロン・トロシアン氏は「大手企業は、顧客が筋金入りの民主党員だろうが共和党員だろうが、あるいは無党派層だろうが、製品を購入し会社を支持してもらいたがっている」と、経営者の気持ちを代弁した。

(Anna Irrera記者、Jessica DiNapoli記者、Imani Moise記者)

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